コンサルタントの眼

第17回 数学を学ぶ重要性

~ 脳の開拓 ~

by 石川 恵美


木の芽の香りが心地よくなる頃に近づいているのにも関わらず、とうとう緊急事態宣言になってしまいました。世界規模の大変革期であり、テレワークの勤務体制の突然の変化への動揺、また休校に関して、教育に携わる方々はとても大変な状況かと拝察いたします。

前回の引き続きで「お約束を守らないお人への対応」記載する予定でしたが、ひとつ、お知らせしたいことがありまして、第17回は「数学を学ぶ重要性 ~ 脳の開拓 ~」にいたしました。この中でのお話は、「お約束を守らないお人への対応」の中で述べるチェックポイントにつながるためです。

緊急事態宣言による休校になって、お子さんの勉強がすすまないことに少々不安を持っているお母さんから相談をうけて、お話しているうちに、数学が苦手な子が沢山いるとのこと。 そして、彼女たちが直面する問題は、数学の将来の必要性を問われると答えられないのだそうです。

「三角関数」は、グラフィックデザイナー、アニメーターなどのお仕事で見かけの長さを算出する際に使用するため、比較的重要度が身近にあります。
ですが、「社会人になったら「方程式を解く」「因数分解」は必要なの?使う場面ってあるの?じゃ、どうして、勉強しなくちゃいけないの?やらなくていいじゃん。お母さんたち、使っているの?」 たしかに素朴な疑問です… でもね、数学を学ぶ目的は、解く力を体得するたけではなく、脳みその鍛練なのです。

●方程式を解く、因数分解 の必要性が全く見えない、何故やるの?
たしかに社会人生活で、数学が必要なのは理系工学系に進んだ人のみと思われます。
でもね、プロジェクト統括していると、仕事で必要な事と、この数学に取り組む事の共通性が見いだされるのです。
「方程式を解く」は、根気です。じわじわ、ちまちま、なんだか本当にこんなことしてて、答えに到達するのか?って、疑問を持ちながらも、それを退けて、葛藤しながら、「地道な努力を重なる」という脳みその鍛練なのです。
どんな業界の仕事でも、丁寧に仕事する姿勢と粘り強く取り組む事で成功につながるのですが、これが、方程式を解くときの精神状態を維持すること、ととても共通するのです。
「なかなか進まない、これでいいの?でもちょっとずつ進歩している。もうすぐ答えに到達する。成功するよね。大丈夫だよね、ああ、やっと答えが見えてきた、できた!」

こうして、光の筋が見えてくる。アドレナリンが、どーんとでてきて、これがモチベーションアップにもつながり、達成感になるのです。これがないと、仕事って本当に続かないのよ、鬱病の原因にもなってしまう。

プロジェクトの計画書作成は、方程式を構築する作業に類似しています。
モデルを立てて、因子(パラメータ)とその動きを定義していく作業は、とてもワクワクします。
しかしながら、実際にプロジェクトを実施しながら発生する事象とモデルの式にパラメータを当てはめて、発生するズレを丁寧に補正していく。実証、検証は、地道な作業です、システム開発の業界では、デバッグ、テストの段階がこれに当たります。
「これでいいの? モデル(仕様)合っているの? 検証方法(テスト方法)も合っているの?」

不安になりながらも、これを投げやりにならずに進める気力の育成に、学生の頃に奮闘した「方程式を解く」という脳の鍛練が一役買っているのです。
もし、プロジェクト内で地道な作業が続く状態で、倦怠期に入ってきたら、メンバーに聞いてみて下さい。
「学生の頃、数学で連立方程式解くのは、どうだった?」と。
苦手でもなんとかやり遂げたという意識がある人は、比較的粘り強さを発揮します、ただし、条件があります。これに関しては、ちょっと長くなるので、次の回「お約束を守らないお人への対応」でお話します。

そしてもう一つ。
「因数分解」は、ひらめき! を会得、体感し、「神が降りてきた!」という脳みその体験、鍛練なのです。論理性を重ねるのではなくて、ぱっとひらめきで、数学が解ける時があるのです。
それは、どちらかというと、神の導きのようなインスピレーション、これもまたアドレナリンが、どーんとでてくる。
「ああ、こんなこと、私にできるんだ」という経験は、脳内でシナプスが連結して別回路が進化して開くという感じ、これが大切なのです。なので、因数分解の実力体得だけではなくて、脳内回路が開くことが必要なのです。なので、
「子どもたちよ、数学をあきらめないで! 数学は、あなたの未来の可能性を広げるのですから。」

実際のプロジェクトの中において、解決策も模索する時点で、「自分なんか考えてもしょうがないから」と、さじを投げてしまう方もいます。しかしながら、問題に向き合って考えていると、ふと自分の内側からとも、外側からともいえないインスピレーションが湧くことがあります。
(株)アトリエ イシカワでは、これを「菩薩が降りてきた」と呼んでいます。
この経験をしていると、簡単には投げ出さない。ただし、宇宙空間瞑想のように、脳内シミュレーションに入ってしまって、声をかけても返事しない人もいます。数学的天才には、お風呂も入らず没頭する方がいるようですが、そこまでになると社会生活に支障をきたしますので、ほどほどに。

これからAIの時代に入り、地味な作業やひらめき等は、RPAやAIの仕事になっていくでしょう。
しかしながら、AIが出した結果が適切かどうか? それを判断するのは、人間です。
何も検証せずに、AIの判断を受け入れてしまうのは、大変危険ではないでしょうか?
ターミネーターのスカイネット、2001年宇宙の旅のHAL など、AIの危険性をテーマにした名作は沢山あります。

AIとの共存の目的は、人間界の平和と繁栄であり、
ひとりひとりのモチベーションが幸福感につながっていることを
今一度認識して、大切にしたいと思います。


という訳で、次回のコンサルタントの眼は、「第18回 心が折れない秘訣-2(仮題)お約束を守らないお人への対応」を掲載します。(たぶん紫陽花が美しい頃)

2020/04/10 、2020/04/13 誤字、体裁の訂正と加筆


石川 恵美
    国内精密制御装置メーカ勤務後、1994年アトリエ イシカワを設立。
    専門は、半導体製造装置、検査装置、製造管理システム。
    アトリエ イシカワ代表取締役 装置プロデューサー/生産ラインコンサルタント